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朱のThinkPad X31を作る

艶消しは嫌い

別に私はThinkPadマニアというわけではないのだけど、所有している4台のノートPCはなぜかすべてThinkPadだ。そもそも最初に買ったのがThinkPad s30で、これはピアノのような光沢を持つ艶ありの黒塗装、という点に惹かれて購入したもの。実はこれを購入したときには、間違って艶消し黒を注文してしまったとか、そういう裏話もあって、けっこうごたごたしたのだが、それはともかくとして、いままでメインで使っていたのは艶あり黒のThinkPad s30(IBM的には「ミラージュブラック」と呼ぶらしい)である。

いざ購入して使ってみると、このThinkPad s30、なかなかコンパクトで使いやすい。なによりすばらしいのは公称6.5時間、実質6時間も持続するバッテリライフだ。AC電源を使えない客先で長時間の作業を行うこともあるという仕事の関係で、ノートPCを選択する上での私の優先順位は

  1. バッテリによる連続駆動時間
  2. 持ち運び易さ
  3. 見た目
  4. 性能

という順番。1と2に関しては、言わずもがなであろう。持ち運びやすさとは、重さ、大きさ、そして形状という3つの要素の複合である。

次の「見た目」というのは、言うまでもなく個人的な趣味。どうせ持ち歩くからには、いつまでもきれいなままで使いたいのだ。もっとも、お客さんの前でPCを操作することもあるわけで、この場合には、あまりみすぼらしいPCを使っているとかっこわるいし馬鹿にされかねないので、この点では一応実利もある、とは言えるかも。

ところで、あくまで「個人的な意見」としてであるが、この「見た目」において、ThinkPadシリーズというのは私の価値観とは大きく異なる部分がある。有り体にいえば、ThinkPad標準の艶消し黒塗装、いわゆる「ThinkPadブラック」と呼ばれる塗装は好きじゃないのである。黒い色が嫌いなのではない。なにしろs30で「ミラージュブラック」を使っているのだから。嫌いなのは「ThinkPadブラック」。いわゆる艶消しの黒なのだ。

なぜ艶消しが嫌いなのか。それは、艶消し塗装は、使っていると「みすぼらしくなる」からである。購入したばかりのThinkPadブラックはたしかにきれいだ。しかしこれを、一度でも手に持ってみるとわかるが、手の触れた部分に脂分が汚れとして残ってしまうのがわかる。表面はざらざらしているので、くっきりと指紋が残るわけではなく「なんとなく」部分的に汚れた感じが残るのである。

たしかにミラージュブラックの様に、指紋などが「くっきりと残る」のに比べればマシ、という意見もあるだろう。しかしつるつる塗装であるミラージュブラックの美点は、ちょっと拭えばすぐに汚れが落ちる点にある。ほんとうにさっと拭えばすぐにきれいになってしまうのだ。これに対してつや消し塗装は悲惨だ。ごしごしこすっても、あまりきれいにならない。さらに汚れが目立ちづらいために、自分でも気づかぬうちに汚れていることも多い。

さらに艶消し塗装は、使っているうちに擦れて艶が出てしまう。たとえばキーボード。スペースバーやリストレスト、kやaのキーはど、普段よく使われるキーや手に触れる部分はつやつやしていて、それ以外のキーは艶消し、といった状態になっていないだろうか。艶消しの部分は、擦れれば擦れるほど表面が平滑になり、次第に艶が出てしまう。

私が艶消し黒を嫌う理由はこれだ。よく手に触れて皮脂が付着し、かつ摩擦の多い部分は次第に艶消しが無くなり、テカってきてしまう。例えていうなら、中高生が着る黒い学生服だ。入学したての頃の学生服はきれいだが、高学年になると、背中や袖の部分が次第に薄汚れて、テカテカになってきてしまう。使い込まれてテカリの出たThinkPadを見ると、ついついあの「テカった学生服」を思い出してしまい、なんとなく嫌な感じになるのだ。

無いのなら、塗ってしまおう

ThinkPad s30は、私が思うThinkPadの最大の欠点である「艶消し黒」という問題を解消した、私にとって「ベスト」の選択肢だった。しかしいくらこれが使いやすくとも、所詮はPentium3-600MHz、そろそろ性能的にも限界に近い。艶消しでないThinkPadは、その後にもう1機種だけ「10周年記念モデル」としてX30が登場している。実は私もこれは購入したのだが、こちらはバッテリ寿命の点で不満があり、結局s30をメインに使っている。

ThinkPad X31が登場したとき、パネルの天板はどうもX30と共通っぽかったので、実はX31とX30の天板を交換してしまおうか、と真剣に考えたことがある。しかし仮にそれを行ったとしても、いつかはそのX31も寿命を迎える。そうなった時にはもう「次」はない。

そこで思い立ったのが「塗装」という手だ。これなら自分で好きな色にできるし、もちろん艶ありだって艶消しだって思いのまま。多少のコストはかかるが、気に入った機種を気に入った色で使えるというのは大きい。

Webで探すと、PCの塗装を行ってくれる業者はいくつかあるようだ。ただ、PCの塗装が流行ったのは1,2年前だったようで、現在ではすでにサービスを終了してしまっているところも多い。そんな中でみつけたのが「岸鉄塗装所」というところで、最初はここに頼もうかと思っていた。しかしN-MIXでどんな色がいいかと話をしているうちに、やはり単なる塗装よりは、本物の「漆塗り」の方がよさそう、と思い始めてきた。

問題は「何色」にするか、である。言うまでもなく元の色は黒なのだが、ここで同じ黒にするのもなんだかシャクだ。というのは、艶あり黒のX30も所有しているから。それにThinkPadであればなにがなんでも黒、という考えもあまり好きではない。どちらかといえば私は、明るめの色の方が好きなのだ。ただ、実際に塗装してもらう場合には、元の色が黒一色であることを考慮して色を決めなければならないのである。なぜならキーボードや底面は塗装するわけにはいかないからだ。ここが黒のままということは、この黒とバランスの良い色であることが必要になる。

となると、塗装できる色は限られる。さらに「漆」となると、使える色はさらに限られてくる。そこで私は黒とバランスの良い色と言うことで、鮮やかな「赤」を選択することにした。漆塗りでも赤(朱)であれば可能であるし、朱と黒の組み合わせは、なかなかバランスが良いと思う。なにしろ、赤はThinkPadのワンポイントとしても生かされているのだから。

漆塗りをお願いしたのは「N-MIXのURL王」ことtsioさんに紹介された、大下美術工房だ。問い合わせてみたところ、快く引き受けてくれた。注文方法は、こちらであらかじめ分解して用意したパーツを送付し、それに漆塗りをしたものを送り返してもらう、というもの。料金は塗り面積などによって違うのだと思うが、私の場合、B5サイズの天板とキーボードベゼル(キーボード手前およびキーボード周囲の枠の部分)の2点およびその付属部品で、合計18000円だった。塗りに要した期間はおよそ1ヶ月。送られてきたパーツは、思っていた通りの鮮やかな赤色で実に美しい仕上がりであった。

質感は申し分なし

到着したパーツを早速組み立てる。パーツを送る前に、塗られてしまって困る部分を外しておいたので、まずはその取付から。漆塗りの場合、塗膜はそれなりに厚いので、場合によってははめ込みの「合い」が悪くなっていることもある。そうした部分は、ナイフの先などで塗膜をちょっと削り落としてやらなければならない。

できあがったThinkPadがどのようになったかは、画像を見た方がずっと手っ取り早いだろう。

感想は、と言えば、自分ではかなり満足している。赤い色はともかくとして、触っていてなんとも「暖かい」感じのする、手触りが非常にいいのだ。最初は色を変更することが第一目的だったのだが、いざできあがってみると「触感の違い」というのが、これほどまでに影響するのか、と思った次第。

あと心配になるのが、どれくらい耐久性があるのか、という点だ。特に、使っている内に艶が無くなってしまうのはちょっと怖い。お椀の内側と違って、箸の先やたわしで擦られるわけでもないので、そうそう傷がつくこともないだろうが、最初の内はまだ漆の塗膜も完全には固まっていないだろうから、しばらくの間は気を付けて取り扱う必要があるのかもしれない。

塗り師さんが選んでくれたのは「銀朱」と呼ばれる比較的明るい赤で、お椀の内側の赤い色よりもちょっと明るめ。かといって、いわゆる「朱色」から想像される、オレンジがかった色ではなく、まさに「赤」とか「紅」とかいうイメージ。非常にきれいな色だ。 天板


前面 キーボードベゼルも塗ってもらったので、手首をつく部分も「漆塗り」となる。これは我ながら大正解だったとおもう。何とも言えない、暖かみのある手触りになるのだ。もともとX31では、この部分は梨地のプラスチックで、塗装さえされていない部分。お世辞にも手触りがいいと言えない部分であっただけに、この差は大きい。見た目の点でも、黒いキーボードと、赤いトラックポイント、それにキーボード枠の朱色の組み合わせもなかなかいい感じではないかと思う。


キーボードベゼルは、本体の上半分までを覆う。このため横から見ると、赤と黒のツートン状にみえて、ちょっと渋い仕上がり。PCカードスロットカバーも塗ってもらったので、こちら側の側面は、比較的赤の面積が多い。天板を止めるネジがちょっと目立つのが残念。元は黒いシールで覆われていたのだが、適当な色のテープで覆うなどして隠したいところ。 左側面


右側面 反対側の側面は、HDDカバーおよび放熱口が黒のままとなる。背面もコネクタ部は黒のままとなっているわけで、全体的に黒の比率が高い。HDDカバー部はともかくとして、それ以外の部分はどうしたって塗って貰うことはできないわけで、やはり塗り替える場合には、元の色とバランスの良い色合いにすることが重要な気がする。


閉じたところを側面から見る。黒い部分と朱の部分とが複雑に重なり合っているのがわかる。液晶パネルをロックするつまみ部分も黒のままとなって、ちょっとしたアクセント。液晶パネル左右にある開閉つまみに関しては、面積が大きかったこともあり、塗って貰った。 閉じたところ


X30 & X31 同じ「つるつる」同士、ということで、ThinkPad X30の10th Anniversaryモデルと重ねて撮影。こうしてペアで撮影すると、なんか現実に「赤いThinkPad」というラインナップも有りかなぁ、という気分になるけど... やっぱ売れないかな?




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